本業の先行きに不安があると、今とは違う業種へ進めば安心できる気がします。制作会社が情報サイトを持つ、店舗経営者が通販を始める、受託会社が自社商品を売る。事業の名前が変われば、新しい売上の柱になりそうです。しかし、違う業種でも、同じ顧客の同じ予算から売上を得るなら、影響を同時に受けることがあります。

AIへの備えとして新規事業を考えるなら、「何の事業か」に加えて、「誰が、どんな理由でお金を払うか」を確認します。見た目の違いだけで分散したつもりにならず、本業と新しい事業の売上が、どこでつながっているかを見たいところです。

業種が違っても、支払う人が同じ場合がある

たとえば、企業の広告制作を請け負う会社が、広告掲載で収益を得るメディアを始める場面を仮に考えます。提供物は違いますが、どちらも企業の広告予算から支払われる部分があります。広告予算が減れば、制作の依頼と掲載費の両方に影響が出る可能性があります。

もちろん、同じ予算に関係するから、新規事業として意味がないわけではありません。顧客層、契約条件、収益の発生方法が違えば、売上の動き方も変わります。ただ、どちらも安定して増える前提だけで計画を立てず、共通して影響を受ける条件を把握しておくことが必要です。

本業と候補事業について、支払う人、利用する人、予算を決める人を分けて書いてみます。利用者が個人でも、売上を広告主から得る場合はあります。利用者の人数だけを見て、支払い側の条件を見落とさないようにします。

AIによって変わるのは、作業だけではなく購入理由かもしれない

本業で資料を作る時間が短くなることと、顧客が資料制作へ支払う理由が変わることは別です。同じように、新規事業でも、提供する作業が残るかだけでなく、顧客が対価を払いたい理由が残るかを考えます。技術の名前より、購入する場面へ目を向けることが大切です。

自社が「便利だから使ってもらえる」と考えていても、顧客は社内で済ませられるなら支払わないかもしれません。逆に、自社で作れるものでも、確認や運営の負担を減らすために外部へ依頼する場合があります。代替できるかどうかを、機能だけで判断しないようにします。

候補事業を調べるときには、顧客が現在どんな方法で問題を解決しているかを確かめます。競合サービスだけでなく、社内の作業、既存の取引先、何もしない選択も比較対象です。新しい技術を使った事業だから、既存の方法より選ばれると決めつけないことです。

本業の強みを使うほど、共通の影響も増える場合がある

既存の顧客や社員の経験を使える新規事業は、準備を進めやすい面があります。営業の接点を生かせる、専門的な判断ができる、現場の事情が分かるといった強みです。一方で、同じ人材や顧客へ頼ることで、本業が忙しくなったときに新規事業まで止まる場合があります。

強みを使うことと、依存を増やすことを分けて確認します。顧客への理解は生かすが、売上の支払い先は別にする。社内の知識は設計に使うが、日常の運営は外部の体制も検討する。必ずこの方法がよいということではなく、何を共有し、何を分けるかを選ぶことが重要です。

候補事業の計画には、本業の担当者が必要な場面を具体的に書きます。立ち上げの確認だけなのか、毎週の判断が必要なのか、顧客対応まで担当するのか。社員の空き時間で進めるという曖昧な前提では、両方が忙しくなったときの優先順位を決められません。

一緒に悪くなる条件を、先に並べてみる

本業と候補事業を比較する際には、売上が増える理由だけでなく、同時に減る理由も考えます。特定業界の予算縮小、集客経路の変化、一社の方針変更、同じ外部サービスへの依存などです。極端な危機を想像するためではなく、計画の前提を知るために行います。

たとえば、両方の事業で一つの広告媒体から顧客を集めるなら、その媒体で費用が上がったときの影響を見ます。別々の商品を売っていても、同じ入口が止まれば、売上が同時に落ちる可能性があります。事業名だけでなく、集客と支払いの経路も比較します。

共通する条件を見つけたら、すぐ候補から外すのではなく、分けられる箇所があるかを考えます。顧客層を変える、契約期間を変える、入口を複数にするなどです。ただし、分けるための費用や運営負担が増える場合もあるため、完全に独立させることだけを目的にしないようにします。

売上の分散と、社長の負担の分散は別に確認する

売上の入口を増やしても、判断がすべて社長へ集まれば、時間の負担は分散されません。新規事業の方が本業より小さくても、初めて扱う問題が多ければ、経営者の時間を大きく使う場合があります。収益の見込みと、関わる仕事を別々に確認したいところです。

外部へ運営を依頼する場合も、どんな情報が定期的に届き、何を自分で判断するのかを聞きます。外注費を払うことだけで、経営上の判断までなくなるわけではありません。確認の頻度、追加予算の扱い、計画変更の相談方法を、契約前に合わせます。

社内で運営する場合は、担当者が不在のときの対応も決めます。新規事業のために採用するなら、採用できない場合の計画も必要です。人員に依存する本業の不安を、同じ人員依存の事業を増やすことで解消できるかは、慎重に検討したい点です。

完成後の収益より先に、検証できる条件を決める

新規事業の売上計画は、まだ確認できていない条件を含むものです。誰が利用し、どこから顧客が来て、何に対価を払うか。それぞれについて、現在分かっていることと、これから確かめることを分けます。計画の数字を細かく作るだけで、前提が確かになるわけではありません。

まず、購入を検討する人の困り事を聞く、競合の契約条件を調べる、小さな提供範囲を試すなど、先にできる確認を考えます。検証の段階で必要な費用と、本格的な構築や運営に必要な費用は分けておきます。始めた後で、調べる費用と作る費用が混ざらないようにします。

確認した結果、候補が本業と同じ影響を受けそうなら、その事実を計画へ反映します。別の案を探すことも、一部の条件を変えることもできます。以前から気に入っていた事業だからといって、都合の悪い情報を除かないことが大切です。

新しい事業は、不安を消す商品ではなく経営上の選択

AIの影響を受けない事業を確実に選べる、という前提では判断しない方がよいでしょう。どの事業にも顧客や競合、技術、運営の変化があります。候補を選ぶ際には、その変化を誰が確認し、どう対応する体制なのかまで考えます。

本業の改善を続けながら、別の収益源を調べることはできます。ただし、新しい事業を持てば本業の問題へ対応しなくてよい、ということではありません。それぞれの目的と予算を分け、いま何を判断しているかを明確にして進めます。

まずは、本業と候補事業の「支払う人」「購入理由」「集客の入口」「運営する人」を一枚に並べてみてください。違う業種という言葉だけでは見えなかった共通点が見つかるかもしれません。その共通点を知ったうえで選ぶことが、将来の収益構成を考える第一歩になります。

検討中の候補が複数あるなら、現在の本業に近い順番だけで並べない方法もあります。顧客を知っているため始めやすい案と、運営体制を新しく作る必要がある案では、確認すべき点が違います。準備のしやすさと、売上の分散という二つの評価を分けることで、選んだ理由を説明しやすくなります。

相談相手には、自社が何を分けたいのかも伝えます。顧客の偏りを減らしたいのか、社長の収入源を分けたいのか、現場に入る時間を減らしたいのか。同じ第二事業の相談でも、目的が違えば提案に求める条件は変わります。事業名を決める前に目的を伝えることが、候補を絞る助けになります。

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